アシル位に強力な電子吸引基であるペンタフルオロフェニル基をもつアミド基が分子内配位した、4配位シリルカチオンの高収率合成に成功した。このシリルカチオンは対アニオンとして弱配位性アニオン(巨大アニオン)であるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをもつ。弱配位性アニオンは、配位性が極度に低いため、無溶媒条件下でも、対カチオン種とゆるやかなイオン対を形成すると考えられる。このため、無溶媒条件下でもカルボニル化合物等の有機化合物を効果的に活性化する可能性がある。この仮定に基づき、種々のシリルエノールエーテルとカルボニル化合物のアルドール反応を無溶媒条件下で検討したところ、従来困難であったケトンとの交差アルドール反応が円滑に進行し、高収率で対応するアルドール付加体を与えることが分かった。同様に、無溶媒条件下で、触媒として同じシリルカチオンを用い、種々のシリルケテンアセタールとケトンを含むカルボニル化合物の交差アルドール反応を行ったところ、良好な収率でβ-ヒドロキシエステルを与えた。 無溶媒条件下で進行する新規なシリルカチオン触媒反応として、シリルエノールエーテルとα、β-不飽和カルボニル化合物のマイケル反応を検討した。反応は室温条件で円滑に進行し、良好な収率でマイケル付加体を与えることが分かった。さらに、同様な反応条件下、α、β-不飽和ニトリルとシリルエノールエーテルの共役付加反応を検討したところ、無溶媒条件下で反応が進行することを認めた。これまで、α、β-不飽和ニトリルとシリルエノールエーテルが反応した例はなく新規な反応である。また、同様な無溶媒条件下、2-シロキシフランとケトンを含むカルボニル化合物との付加反応が進行した。これまで、ケトンと2-シロキシフランが反応した例はなく新反応である。以上、弱配位性アニオン(巨大アニオン)であるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをもつシリルカチオン触媒が、新規反応を含む無溶媒触媒反応に高い活性を示すことを明らかにした。
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