研究概要 |
アシル位に強力な電子吸引基であるペンタフルオロフェニル基をもつアミド基が分子内配位した、4配位シリルカチオンを触媒とする、種々の触媒的有機反応を検討した。無溶媒条件下で進行する新規なシリルカチオン触媒反応として、α,β-不飽和ニトリルとシリルエノールエーテルまたはケテンシリルアセタールとのマイケル反応を開発した。カルボニル化合物とα,β-不飽和ニトリルのマイケル反応は、有機合成的に有用なδ-ケトニトリルの直接的合成法として重要な反応であるが、従来の反応条件では反応選択性が乏しいため、これまで利用されてこなかった。われわれは、触媒としてシリルカチオン触媒を用い、カルボニル化合物の等価体としてケイ素エノラートを用いることにより、この反応における高い選択性を実現した。このマイケル反応は、5mol%のシリルカチオン触媒の存在下、無溶媒条件で円滑に進行し、対応する付加体を良好な収率で与えた。 シリルカチオン触媒を用いる、カルボニル化合物とケイ素エノラートの交差アルドール反応において、高い官能基選択性を認めた。すなわち、基質としてケトン基とホルミル基の二種類のカルボニル基を有するアセチルベンズアルデヒド等を用いたところ、交差アルドール反応はホルミル基とのみ反応し、良好な収率でケトンカルボニル基を有するアルドール化合物を与えた。さらにカルボニル基と水酸基が共存する基質においても水酸基を保護する必要なく、ケイ素エノラートとカルボニル基の交差アルドール反応が円滑に進行することが分かった。通常の金属ルイス酸触媒の場合、水酸基とルイス酸が反応してしまうため水酸基を保護する必要がある。これらの結果は、シリルカチオン触媒が従来のルイス酸触媒に比べて温和かつ効果的な触媒活性を有し、高い選択性を示すことを明らかにしている。 光学活性なビナフトール基をシリルカチオンに導入する方法を確立した。新規な不斉シリルカチオン触媒を用いた予備的な検討を開始した。
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