ケトン(R^1COR^2)とアリル金属試薬(R^3CH=CHCH_2M)3との反応によってγ-付加体ホモアリル型アルコール(R^1R^2C(OH)CHR^3CH=CH_2)1が立体選択的に得られる。1は、酸触媒存在下でアルデヒド(RCHO)と反応し相当するヘミアセタール(RCH(OH)OCR^1R^2CHR^3CH=CH_2)H_1続いてオキソカルベニウムイオン中間体、さらにその6員環イス型遷移状態TS_1を経由する[3.3]-シグマトロピー転移によるアリル移動反応(allyl-transfer reaction)(野上が命名)を経てα-付加体ホモアリル型アルコール(RCH(OH)CH_2CH=CHR^3)2を生成する反応を発見した。 本反応は立体特異的に進行し、光学活性1からはその光学純度を100%保持して光学活性2が得られることを明らかにした。本反応を応用して、不斉補助剤として光学活性メントンを用いるアルデヒドの簡便な不斉2-アルケニル化反応を開発した。光学活性メントンは、安価で光学的に純粋なメントールの両鏡像体を酸化して容易に得られることから2の両鏡像体のいずれをも必要に応じて自由に合成することができる簡便な手法を開発できたことになる。メントン誘導体アリル供与体1は、メントンに任意のGrignard試薬3(M=MgCl)を反応させて収率良く調整できることから、従来の不斉アリル化反応でアリル供与体として汎用されたアリルスズ試薬に比べ環境調和型反応と言える。 不斉補助剤として光学活性(+)-イソメントンを用いると、3との反応ではジアステレオマー混合物としての1が得られ、その両方がアルデヒドに対してallyl-transfer反応する。したがって、不斉アリル化反応としてはジアステレオマーの分離が必要となるが、シリカゲルカラムクロマトで容易に分離できた。その一方をallyl-donorとするアルデヒドへのallyl-transfer反応からはZ体2のみが得られることを見出した。これは、最初のアルデヒドへの高立体選択的Z-2アルケニル化反応と思われる。
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