研究概要 |
1,1'-ビ-2-ナフトール骨格からなる高分子の精密合成法の開発は、高次構造や機能の制御など、新規材料創製の観点から極めて興味深い。我々は、2,3-ジヒドロキシナフタレン誘導体をモノマーとした不斉酸化カップシング重合法の確立による、その構築について種々の検討を行なってきた。 1.銅(I)-ビスオキサゾリン錯体が2,3-ジヒドロキシナフタレンの重合において高い触媒活性を有し、ポリ(2,3-ジヒドロキシ-1,4-ナフチレン)を室温で定量的に与えることを見出した。さらにこの触媒系が、2-ナフトール誘導体3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸エステル類とのカップリング反応において極めて高いクロスカップリング選択性を示すことを明らかにした。また、非対称型あるいは対称型の6,6'-ジヒドロキシ-2,2'-ビナフチル誘導体の不斉酸化カップリング重合を行なうことにより、Head-to-Tail構造、交互共重合構造を有するポリマーを高選択的に構築することに成功した。すなわち、様々な構造を有するポリ(ビナフトール)誘導体を高選択的に構築することに成功した。 2.触媒設計による2,3-ジヒドロキシナフタレンの重合についてさらに検討した結果、市販のオキソバナジウム(VI)塩とビスオキサゾリン配位子から容易に調製される錯体が高い立体選択性を有し、高収率でポリマーを与えることを見出した。このような光学活性バナジウム錯体を用いた有機反応はこれまでに報告例がなく、新規な不斉触媒として非常に興味深い。また、2核型の構造を有する新規な銅(II)錯体が、2,3-ジヒドロキシナフタレンの重合において高い触媒活性を有することを見出した。
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