研究概要 |
希土類のイットリウム(Y)を中心金属とし、各種の2級アミンのアミドを配位子とするアート錯体がメタクリル酸メチル(MMA)のリビング重合開始剤となることを明らかにした。塩化イットリウム(YCl_3)に対して、各種2級アミンのリチウムアミドとブチルリチウム(BuLi)の混合物を計4当量反応させて得られるアート錯体を開始剤として、MMAのアニオン重合をTHF中-78℃で行うと、分子量の揃ったPMMAが高収率で得られた。生成物のMALDI-TOF-MSによる解析から、開始末端には開始剤のアミドに由来するアミノ基が存在することが明らかとなった。同様の条件におけるYを用いないリチウムアミドのみを開始剤とする重合ではYアート錯体による場合よりも分子量分布の広いPMMAが得られたことから、この重合は末端にアミノ基を有する分子量の揃ったPMMAを合成するための有効な手段であるといえる。さらに、Yアート錯体を開始剤とするMMAリビング成長末端にアクリル酸t-ブチル(tBA)を加えたところ、ブロック共重合がリビング的に進行し、分子量の揃ったMMA-tBAのブロック共重合体を得ることができた。 さらに、遷移金属アート錯体を成長末端における対アニオンとして用いた、イソブチルビニルエーテル(IBVE)のカチオン重合に成功した。Mo, Nb, Wの塩化物に対して、2級アミンのリチウムアミドとBuLiの混合物を反応させて得たアート錯体に、塩化トリチル(Ph_3CCl)を反応させることにより、トリチルカチオンを対カチオンとするアート錯体を発生させた。ここにIBVEを加えるとカチオン重合が進行してPIBVEを得ることができた。反応条件によっては、分子量の揃ったポリマーの合成も可能であった。
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