最終年度に当たる本年度は、ポリ[3]ロタキサン構造形成の方法論、並びに新しいポリマーの合成についてさらに詳細に研究した。また研究成果をまとめた。 環状オリゴマー生成の制御を目的としたモノマー設計:重縮合反応や重付加反応などのstep polymerizationにおいては環状オリゴマー生成は避けて通れない反応であるが、できるだけその生成を少なくして、線状ポリマーの生成を促進するモノマー設計について検討した。特に、二つのモノマーの1:1付加体の生成を不利にする設計を検討した。ダンベル型分子の中心のジスルフィド結合とアンモニウム間の距離、すなわちスペーサーの長さを長くしたジスルフィド型ダンベル分子、並びにめがね型分子のクラウンエーテル間の距離、すなわちスペーサーの長さを長くしたクラウンエーテルめがね型分子を合成した。 ポリ[3]ロタキサンの合成:合成したモノマーを用い、チオフェノールを触媒として対応するポリ[3]ロタキサンを合成した。スペーサーが長くなると重合速度は遅くなり、重付加反応が平衡に達するまでに2週間程度が必要であったが、生成ポリマーの分子量は数万となり、オリゴマーの生成を抑制することでポリマーの分子量を上げることができることがわかった。 リサイクル特性:得られたポリ[3]ロタキサンの特性を検討する目的で、リサイクル特性について検討した。スペーサー長の短いポリマーについて、ジスルフィドの典型的な還元系であるトリフェニルホスフィン+水を用いて処理したところ、元の合成原料であるめがね型分子とダンベル型分子の還元体であるチオールが定量的に得られた。この結果より、このポリマーの高いリサイクル特性がしめされた。 これまでに得られた結果をまとめた。
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