1.有機共役高分子の逆項間交差緩和 有機共役高分子についての15・16年度の結果を整理し、凍結溶液系での時間分解EPR測定を進めた。理論的に予測された比較的高い効率での逆項間交差は確認されず、観測条件の最適化を検討した。特に、過渡的なEPR信号強度の励起波長依存性、観測温度、観測試料の状態などについて、典型的な数種の有機共役高分子系を対象として進めた。均一溶液系での結果を整理するとともに、キャスト法あるいはスピンコート法で作成した薄膜状態の試料についての研究に展開した。薄膜系では信号強度の低下のために、逆項間交差についての定量的解析まで完了していない。しかしながら、均一系(凍結溶液系)に比較して、定性的には、効率の改善が観測されたので、観測条件についてさらに検討を進めることが必要であると考えられる。 2.レーザー二段階励起発光スペクトル 極低温での定常状態での発光測定の結果を基に、レーザー二段階励起法と組み合わせたレーザー二段階励起発光スペクトル測定を広い温度範囲で観測した。この中で、有機共役高分子の発光スペクトルの二段階励起に伴う発光強度変化を時間分解EPR測定の結果と対応させて解析を進めた。また、観測対象として常磁性種も含まれることを考慮して、磁気光学効果を観測する試みも行った。今後、装置の改良を進めることにより、有機分子系を対象とした過渡的常磁性種の動的挙動を明らかにする新規手法となる可能性について確認した。 3.低分子発光材料の励起三重項状態 PtおよびIrを含む錯体の励起三重項状態の性質を、電子状態が類似していると期待されるラジカル種を発生させて、この種の電子構造についての解析を進めた。Xバンド(9GHz)の観測結果と併せて整理し、高効率EL発光に対する三重項リン光機構についての検討を進めた。
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