1.低分子・共役高分子の逆項間交差緩和 低分子の有機色素(Rhodamine系、シアニン系、ポルフィリン・フタロシアニン類)化合物について、レーザー二段階励起時間分解EPR(TREPR)測定により逆項間交差緩和の量子収率を決定した。ポルフィリン・フタロシアニン類については、中心金属の効果について詳細に検討を進めた。また、有機共役高分子の均一溶液中あるいはFilm試料を用いてTREPR測定を進めたが、励起三重項状態に帰属される信号は観測されなかった。しかしながら、電荷分離状態に由来する過渡的信号が観測され、電荷輸送過程に関与するラジカル対に帰属された。一連の高分子フィルム試料の結果から、TREPR法が不均一系中の過渡種の同定と電子構造を明らかにする有力な手法であることが明らかにされた。 2.レーザー二段階励起発光スペクトル レーザー二段階励起発光スペクトルとTREPRの同時測定から、極低温における励起状態間の緩和過程を明らかにすることにより、電荷再結合に伴い生成する発光状態のスピン状態を含めた解析が可能なシステムとして整備した。広い温度範囲で観測を進め、有機共役高分子の発光スペクトルの二段階励起に伴う発光強度変化を時間分解EPR測定の結果と対応させて解析を進めた。 3.低分子発光材料の励起三重項状態 PtおよびIrを含む錯体の励起三重項状態の性質を、多周波時間分解EPR測定により明らかにするために、34GHz(Qバンド)帯での測定を進めた。しかしながら、いずれの錯体化合物においてもスピン軌道相互作用が大きく、直接観測に成功していない。そこで、電子状態が類似していると期待されるラジカル種を発生させて、この種の電子構造についての解析を進めた。Xバンド(9GHz)の観測結果と併せて整理し、高効率EL発光に対する三重項リン光機構についての検討を進めた。
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