研究概要 |
本研究では,端面をカットしたプリズム基板上に有機半導体デバイスを作製し,多重内部反射赤外吸収分光(MIR-IRAS)と光電子収量分光(PYS)測定と,変位電流測定,電圧-電流特性などの素子特性を合わせて測定し,デバイスの動作機構を調べる装置の開発を進める. 本年は,上記測定手法を真空一貫プロセスに組み込むための前段階として,個々の手法の開発を進めた.MIR-IRASに関してはC60やペンタセンの電界効果トランジスタの測定を行い,電界効果により発生すると考えられるキャリア由来のスペクトル変化を測定するための条件出しを進めた.PYSに関しては,パージ型紫外光照射システムを購入して,微少電流計によるPYS測定システムを開発した.この手法では,大気中でも,真空中でも雰囲気によらず試料のイオン化ポテンシャルを決定出来る.これまでの装置では6.2eVをこえるイオン化ポテンシャルをもつ試料は大気中の酸素の吸収のため測定ができなかったが,本装置では,4から10eVまでの広い範囲のイオン化ポテンシャルを有機デバイスの動作環境の状態で測定出来る. 電気特性測定に関しては,変位電流評価法を電界効果トランジスタへ応用することをすすめた.この手法を用いると,トランジスタ内におけるキャリアの挙動,トラップ効果がわかるだけでなく,実際に素子中に蓄積した電荷量などを実験的に決定出来るなどの他の手法では得難い情報が得られることを明らかにした.また,この手法による測定から,問題になっていた有機トランジスタの動作機構に関して,ソース・ドレイン電極からの電荷注入プロセスが本質的に重要であることを見出した.
|