研究課題
基盤研究(B)
螺旋構造は蛋白質、核酸、多糖類などの鍵となる構造であり、生体模倣系あるいは人工超分子系における螺旋構造に関する関心が高まっている。人工合成系における螺旋組織化は、共有結合系でのコンホーメーションの制約、金属配位、疎溶媒性相互作用、非共有結合性相互作用、などを通して獲得されてきた。最近我々は、適切にプログラム化した複素環オリゴマーの分子内自己組織化に基づく螺旋超構造の形成に対する一般的なコンセプトを導入した。すなわち、ピリジン-ピリミジン部分を用いることによって螺旋性誘起を達成し、最長4回転までの螺旋構造を形成した。本研究では、このプログラム化コンセプトをさらに、ピリジン-オキサジアゾール、ピリジン-ピラジノチオフェン、ピリジン-キノキサリン、ピリジン-ベンゾチアジアゾール部分など、多様な複素環交互オリゴマーに発展させることを目指した。ピリジン-オキサジアゾール交互オリゴマーに関しては主に無置換体の合成を検討し、2-ピリジンカルボン酸および2,6-ピリジンジカルボン酸を出発原料として、3量体、5量体、7量体、9量体の合成を達成した。これらオリゴマーのNMRスペクトルにおける末端ピリジン環プロトンを比較したところ、1回転螺旋構造を形成し得る9量体においてのみ有意な高磁場シフトが観察され、このストランドが期待通り螺旋自己組織化能を持つことが示唆された。一方、ピリジン-ピラジノチオフェンおよびピリジン-キノキサリン交互オリゴマーに関しては、Stilleカップリングによって3量体を合成し、X線結晶構造解析によって、固相でのトランソイド配座性を確認した。また、当初は計画していなかったピリジン-チオフェン交互オリゴマーについても合成を行い、X線結晶構造解析において、3量体がシソイド配優先することを確認するとともに、11量体の末端チオフェン環のβ位プロトンに高磁場シフトが観察され、螺旋形成の可能性が示唆された。
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