研究概要 |
鏡像体を分離・分析するニーズの高まりを受け、キラルカラムを用いたクロマトグラフィーがますます注目を集めている。特に、近年、試料になるキラルアミンの脂溶性が高まってきており、順相の溶出液を用いたクロマトグラフィーの開発が求められている。このため化学修飾を施したキラルセレクターの開発と、セレクターの担体への固定化研究の両者が必要になってきている。本研究課題では溶液中の不斉認識能の非常に高い超高性能キラルセレクターを創出し、順相から逆相までの広範囲な溶出液を自由に選択しうる化学結合型汎用キラルカラムの開発を第一の目標にしている。さらに、第二級アミン用セレクターの開発に展開したキラルカラムの作製を第二の目標とした。 研究代表者および研究分担者はアニソール型キラル擬18-クラウン-6エーテルをセレクター部とするキラル固定相(1)を作成し、これを使ったキラルカラムが高い分離能を持つことを見出し、その実用化に成功している。そこで、カラム性能に大きな影響を及ぼすと考えられるキラル部位とともにアニソール型とフェノール型の違いが不斉識別にどのような影響をおよぼすのかを調べることを計画した。具体的に、本年度の研究実施計画では、以下の2点の計画をたてた。 1.フェノール性キラル擬18-クラウン-6エーテルをセレクター部とするキラルカラム(2)を作成し、アニソール型とフェノール型の違いのカラム性能に対する効果を調べる。 2.キラル認識部位に1-アダマンチル基のような嵩高い置換基を有するクラウンエーテルや1-フェニルー1,2-シクロヘキサンジオールをキラルユニットにもつクラウンエーテルをセレクターとするキラルカラム(3、4)を作成し、キラルアミンに対する鏡像体分離能を調べる。 計画したセレクターの内、(2)、(3)、(4)を合成し、これら三種類については、既にキラルカラムの試作品を作製する事に成功した。尚、アニソール型クラウンエーテルをセレクター部とするキラル固定相(1)との比較の点からキラル固定相(2)の分離能を論じ、その結果は論文として発表した。また、第二目標のために、第二級アミン用セレクターの開発もおこない、その結果も報文になった。また、1-フェニル-1,2-シクロヘキサンジオールをキラルユニットにもつクラウンエーテル(3、4に対応する)のキラルアミンに対する不斉認識をシフト試薬としての観点から評価し、その結果を報文としてまとめた。
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