研究概要 |
研究代表者らは既に18-クラウン-6型キラルクラウンエーテルをセレクター部とするキラル固定相(1)を作成し、これを使ったキラルカラムが高い分離性能を持つ事を見出すとともに、本キラルカラムの実用化に成功している。昨年度は、1-フェニル-1,2-シクロヘキサンジオールをキラルユニットにもつクラウンエーテルをセレクターとするキラルカラム(2(フェノール型)、3(アニソール型))を作成し、3がいくつかのキラルアミンに対し、1よりも優れた鏡像体識別能を示すことを見出した。本年はこのキラル固定相の実用化に向けたデータを揃え、実用化が可能か否かを判定すると共に、新たなキラルセレクターとして第二級アミン用キラルセレクターの合成ならびにキラルカラムの性能評価をおこなう計画をたてた。 具体的に、本年度の研究実施計画では、以下の2点の計画をたてた。 1.フェノール性キラル擬18-クラウン-6エーテルをセレクターを大量合成し、これらをセレクターとする化学結合型キラルカラム(2(フェノール型)、3(アニソール型))を作成し、アニソール型とフェノール型の違いのカラム性能に対する効果の調査 2.第二級アミン用として、擬24-クラウン-8型キラルセレクター(4)の作製 合成:計画したセレクターの内、(2)、(3)を大量合成し、3についてはキラルカラムの通常サイズ(25cm長)のカラムを作製する事に成功した。(4)については、キラルカラムの作成途上である。 評価:アニソール型クラウンエーテルをセレクター部とするキラル固定相(1)を用いて、生体内で見られる通常のアミノ酸20種類を全て含む30種類のアミノ化合物の分離能を調べた。紫外吸収検出器では検出の困難なアミノ化合物についても質量分析器を検出器として用いることにより調べ、これまで調べられていなかった広範囲の基質アミンに対しても優れた分離性能を示す事を確認した。その結果は論文および学会発表として報告した。1との比の点からキラル固定相(2)を用いて、上記30種類のアミノ化合物の分離能を調べた。いくつかのアミンに対して1を上回る分離能および分析効率の向上につながる保持時間の短縮を実現した。その結果も報文とするため投稿した。現在審査が通り改訂および印刷の段階にある。以上のように2に関しては予定した分離性能や保持時間のデータがとれ、今後の製造コストの最小化と価格設定をふくめて実用化検討が進んでおり、マーケットの需要により、実用化に対応できる状況になった。
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