研究概要 |
我々は銅イオン交換ゼオライト(CuZSM-5)が,室温で,窒素分子と特異的に相互作用することを見いだした.本年度は.特に窒素吸着サイトの解明をめざした実験を行った.そのために,各種のイオン交換法で調製した試料への窒素の吸着特性を調べ,ZSM-5中の"M7"サイトが窒素特異吸着サイトであるという提案を行った.この研究過程で,2159cm^<-1>にのみ吸着CO種によるバンドを与える(特定のサイトへイオン交換された)試料の調製に成功した.また,窒素吸着特性が極めて高い試料の調製にも成功した.更に,調製法によっては金属銅が形成されることも明らかにでき,金属銅形成メカニズムの解析も行った.更に,ナノサイズの細孔を有する物質(MCM-41)を材料として利用した新しい銅イオン交換試料の開発を試みた.ゼオライトの場合と同様に金属銅形成の現象も見いだした.また,CuZSM-5試料中で水素と1価銅イオンとの特異な相互作用も見いだし,現在,その現象の解明を進めている.(この際,本申請により購入したMCTを装備した赤外分光光度計,Diglab FTS-4000MXK,を使用した実験を行い,初めて,水素吸着種を室温で確認できた.この意義は極めて大きいと考えている.この現象は世界で初めて見いだされた驚くべき現象である.)更に,我々が開発を目ざしている光検出XAFS法を利用した原子価およびサイト選択的構造解析の実験も行っている. 室温での窒素の吸着現象は興味深い現象である.加えて,交換された銅イオン上で水素がspill-overされH-D交換反応が起こることもわかったので,マイルドな条件下でのアンモニア合成も夢では無いと考えている.今後,本研究を,ゼオライトなどの骨格を触媒活性種の配位子として利用し,交換イオンの電子状態と原子レベルでの配位環境を制御した特異な反応場創製をめざした研究へと展開していきたい.
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