ppbレベル対応超高感度半導体ガスセンサの展開

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15350084
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 山添 昇 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 教授 (40037817)
• 研究分担者: 酒井 剛 宮崎大学, 工学部, 助教授 (40284567) ; 島ノ江 憲剛 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助教授 (10274531)
• キーワード: 半導体ガスセンサ / ナノ粒子 / ゾル粒子 / ガス拡散 / 微細構造 / 薄膜 / 水熱処理 / 高感度化

研究概要

近年、環境やアメニティの観点から、各種環境汚染ガス、揮発性有機化合物(VOC)、有機ガス、におい(悪臭)ガスなどのセンサ計測の重要性が高まっている。これらのガスの計測には、ppb〜数ppmレベルの検知が可能な半導体ガスセンサの開発が不可欠であり、本研究では感度を現行より飛躍的に向上させるために、粒子径効果、増感剤添加効果、ガス拡散による利用率効果を総合したガスセンサの開発を提案している。平成15年度の研究成果を以下に示す。
(1)粒子径が異なるSnO_2ゾルの作製とそのセンサ感度
水熱処理法を用いて粒子径5〜15nmのSnO_2ゾルの作製方法を確立し、その薄膜型センサ素子についてガス感度を測定したところ、これまで薄膜型ガスセンサでは膜厚の増加に伴い、感度が減少する結果が得られていたが、粒子径を大きくするとガス感度が増大することを確認した。つまり、ガス拡散性の向上により、感度が増大することを確認した。
(2)SnO_2一次粒子への増感剤成分の分散固定化
ナノオーダーのゾル粒子表面に増感剤を固定化するためには、通常触媒調製で用いられる担持法は不可能である。そのため、新しい担持方法として逆ミセル法を用いた固定化を検討した。一つの逆ミセル中に一つのゾル粒子と金属塩水溶液を含有させ、もう一つの逆ミセル中にアルカリ性溶液を含ませ、これを衝突させることで、ゾル粒子表面に金属水酸化物を加水分解固定化を試みている。現在のところ、その増感剤の粒子径と分布状態を電子顕微鏡を用いて調査中である。
(3)ナノ組織体の調製
SnO_2ゾルをポリエチレングリコールを用いてクラスター化し、これをスピンコート法により製膜し、焼結してナノ構造体を得る方法を検討している。現在、種々の調整条件と得られた構造体の高次構造を細孔分布、電子顕微鏡などを用いて、その相関を調査している。
(4)他の金属酸化物微粒子の調製とその微細組織制御
SnO_2ゾルを用いたガスセンサで得られた知見を基に、WO_3微粒子、TiO_2微粒子の微細構造制御とそのセンサ感度との関係を調べた。WO_3の場合、イオン交換法を用いることで、ラメラ構造の二次粒子がガス拡散性を大きく促進し、高感度のNO_2センサが構築できることを見出した。さらにTiO_2微粒子では、15nmの微粒子を用いて薄膜素子を作製したところ、同様な感度の増大を確認した。

研究成果

• [文献書誌] Y.-G.Choi, G.Sakai, K.Shimanoe, N.Miura, N.Yamazoe: "Wet process-prepared thick films of WO_3 for NO_2 Sensing"Sensors and Actuators B. 95. 258-265 (2003)
• [文献書誌] A.Ruiz, G.Sakai, A.cornet, K.Shimanoe, J.R.Morante, N.yamazoe: "Microstructure control of thermally stable TiO_2 obtained by hydrothermal process for gas sensors"Proc. of EUROSENSORS XVII. 117-120 (2003)
• [文献書誌] D.D.Vuong, G.Sakai, K.Shimanoe, N.Yamazoe: "Preparation of grain size-controlled tin oxide sols for gas sensor application"Proc.of EUROSENSORS XVII. 343-346 (2003)
• [文献書誌] U.-S.Choi, G.Sakai, K.Shimanoe, N.Yamazoe: "Sensing properties of SnO_2-Co_3O_4 composites to CO and H_2"Sensors and Actuators B. 98. 166-173 (2004)