研究概要 |
三角錐形の金・銀ナノ粒子が,平面薄膜に比べて2桁にも達する驚異的な局所プラズモン電場を発生することが2年前理論的に示された。そこで本研究では,申請者らが開発した金ナノロッドの新規合成技術の改善ならびに金ナノロッドの透明基板上への固定化について検討すると共に,誘電率変化による金ナノロッドの吸収スペクトルシフトを原理とする新規LPRセンシング技術の有用性について検証することを目的として研究を遂行した。主な成果は以下の通りである。 (1)金ナノロッドの新規合成 近年,電解法,ミセルテンプレート法,光反応法による金ナノロッドの合成が相次いで報告されたが,収率,再現性に乏しいという問題があった。本研究では,化学還元と光反応を組み合わせることにより,極めて短時間かつ高収率で金ナノロッドが合成できることを明らかにした。現在,ミセルの種類や照射波長を変えて改善を進めている。 (2)固定基板の作製 ガラス基板にポリカチオンとポリアニオンを静電吸着させたものを金ナノロッド溶液に浸漬すると,金ナノロッドの吸着が確認できた。いくつかの溶媒に浸したところ,特に長軸方向のプラズモンピークがシフトし,溶媒の屈折率とシフトに相関性が認められた。この結果は,ナノロッド周囲のミクロ環境がプラズモン共鳴に影響を及ぼしているためであり,屈折率変化を検出するセンサーとしての有用性が明らかとなった。 (3)金ナノロッドフイルム 水とヘキサンの界面に金ナノロッドを単粒子層で二次元的に並べる手法を開発した。購入した簡易ラマン装置を用いて,このフィルムに吸着させたローダミンのラマンスペクトルを測定したところ,球状粒子に比べて一桁強いラマン信号が観測された。表面増強ラマン効果が顕著に現れる配列構造を明らかにした。
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