超分子方法論に基づく化学発光系の高効率化

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15350086
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 袁 徳其 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (70304962)
• キーワード: シクロデキストリン / 化学発光 / エネルギー移動 / 超分子形成 / 分子認識

研究概要

1.EDTAで架橋したCD二量体の合成:CDの一級または二級水酸基一個をアミノ基に置き換え、そのアミノ基を通してEDTAで架橋を施し、更にEDTA架橋部のカルボン酸基またはCDの水酸基を修飾することで合計11種のCD二量体を合成した。
2.超分子の形成および構造:1で合成したCD誘導体を用い、Ce^<IV>イオンとの錯形成および金属中心の構造について、500MHz NMRの解析、TOF-MS、紫外・可視スペクトル等の測定によって検討した。
3.化学発光反応:1で合成したCD誘導体を用い、Ce^<IV>/過酸化水素/ルミノールの化学発光研究を系統的に行った。その結果、無触媒反応条件下でのルミノール発光量に比べ、一級水酸基側で架橋したCD二量体のCe^<IV>錯体はルミノールの発光量を40倍まで増加させた。これに対し、二級側で架橋したCD二量体のCe^<IV>錯体を用いた場合、発光量は無触媒反応のそれの2、3倍程度であった。また、CD単量体のCe^<IV>錯体を用いた場合、発光量は一級側のCD二量体Ce^<IV>錯体の10分の1にも及ばなかった。これらの結果から、CDの二量体構造が触媒能発現において大きな意味を持ち、修飾糖の構造および架橋位置の違いも発光量に大きく影響することが分かった。更に、CD二量体の架橋部にピリジル基を導入することで、ルミノールの発光量はピリジル基導入前に対し5倍まで増加した。しかし、イミダゾリル基を架橋部に、あるいは直接CD単位に導入すると、ルミノールの発光量は大きく減少した。以上の検討からCD二量体及び架橋部の金属配位構造が触媒能に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
4.金属配位子をもつCD単量体〜多量体の合成:phenanthrolineを用いて、α-、β-およびγ-CDにキャップを施し、5種のキャップドCD誘導体を合成・構造決定した。NMR、蛍光スペクトル測定により、これらのキャップドCDの包接能について検討を行った。また、meso-テトラフェニルポルフィリンにCD1個〜4個を導入し、ポルフィリン-CD単量体〜四量体を合成した。来年度中、ルミノールや過シュウ酸エステルの発光反応に対するこれらのCD誘導体の増感効果について検討する。

研究成果

• [文献書誌] D.-O.Yuan, ^* T.Tahara, W.-H.Chen, et al.: "Functionalization of Cyclodextrins via Reactions of 2,3-Anhydro-cyclodextrins"Journal of Organic Chemistry. 68・24. 9456-9466 (2003)
• [文献書誌] H.J.Lindner, D-Q.Yuan, ^* K, Fujita, K.Kubo, F.W.Lichtenthaler^*: "Crystal Structure of Mono[3-(2-imidazolylthio)]-altro-β-cyclodextrin : Elliptical Distortion of the Cavity and Unique ´Yin-Yang´ Stacking"Chemical Communications. 14. 1730-1731 (2003)
• [文献書誌] D-Q.Yuan, ^* N.Kishikawa, C.Yang, K.Koga, N.Kuroda, K.Fujita, ^*: "Fluorophore-Capped Cyclodextrins as Efficient Chemical-to-Light Energy Converters"Chemical Communications. 3. 416-417 (2003)
• [文献書誌] D.-Q.Yuan, S.Immel, ^* K.Koga, M.Yamaguchi, K.Fujita: "The First Successful Crystallographic Characterization of Cyclodextrin Dimers : Efficient Synthesis and Geometry Investigation of a Doubly Sulfur-bridged β-Cyclodextrin Dimer"Chemistry - A European Journal. 9・15. 3501-3506 (2003)
• [文献書誌] D.-Q.Yuan, ^* C.Yang, T.Fukuda, K.Fujita^*: "An Effecient Strategy for the Modification of α-Cyclodextrin : Direct Conversion of One or Two Adjacent 6-OHs to Phthalimides"Tetrahedron Letters. 44・3. 565-568 (2003)
• [文献書誌] C.Yang, D-Q.Yuan, ^* Y.Nogami, K.Fujita, ^*: "Per (3-deoxy) -γ-cyclomannin : The First Non-cyclodextrin-type Cyclooligosaccharide Featuring Hydrophobic Binding Properties"Tetrahedron Letters. 44・25. 4641-4644 (2003)