研究概要 |
従来の設計指針に囚われない新しい分子を用いて有機超伝導体の開発を進めているが、その結果、最近二つの分子で超伝導体を開発することに成功した。その中でBDA-TTP分子は多数の安定な金属を与えるBDH-TTPを構造的に修飾を加え、平面性を崩すことにより、これまでに5種のラジカル塩から超伝導が出現している。BDH-TTP分子には、不斉導入が可能な炭素原子が4箇所あるが、いずれも、先にキラル分子性超伝導体として報告があったS,S-DM-BEDT-TTFの不斉中心の炭素原子に比較すると、結晶中における熱振動が少なく、BDH-TTPに不斉を導入した誘導体の錯体においては、顕著な不斉効果が現れることが期待できる。本年度は、キラルなBDH-TTP誘導体の合成経路の検討兼ねて、2,3-ペンタンジオールを不斉源としてR,R-DMDO-METとR,R-DMDO-MDDHを合成し、そのラジカル塩の構造と電気特性を研究した。R,R-DMDO-MET分子からは3種のラジカル塩で単結晶を作成することに成功した。いずれの塩も半導体的な特性を示し、構造はキラルなP212121空間群に属し、α型ドナー配列を取ることが解った。ドナーとアニオンの組成比はBF4、C1O4塩では1:1、AsF6塩では2:1あった。R,R-DMDO-MDDH分子からは単結晶を得るに至っていないが、AuI2塩では255K以上で金属的な電気特性を示した。
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