本研究では、再生可能資源から得られ生分解性プラスチックとして期待されているポリ乳酸およびバイオベースポリマーの酵素や固体酸など環境受容型触媒を用いる循環型ケミカルリサイクル法の開発を行った。さらに近年バイオポリチオエステルの開発が試みられているが、本研究では酵素触媒による合成及びリサイクル法についても研究を行った。結果の概要を以下に示す。 1 バイオベースポリマーの再重合性環状オリゴマーへの変換 ポリブチレンアジペートを中心に、酵素を用いる環状オリゴマー化について基本的パラメーターの取得を行った。その結果、ある種の有機溶媒中リパーゼにより速やかに環状オリゴマーに変換されることを見出した。オリゴマーサイズによりリパーゼとの親和性及び再重合による分子量が顕著に異なることを見出した。 2 ポリ(L-乳酸)の固体酸を用いる新規ケミカルリサイクル法の開発 ポリ(L-乳酸)に粘土鉱物であるモンモリロナイトを作用させることにより効率的にオリゴマー化が進行することを見出した。この様にして得られた乳酸オリゴマーは、固相重合により容易に再重合し、分子量10万以上のポリ乳酸が再生されることが確認された。これらのことから、バイオベースポリマーのケミカルリサイクルシステムへの道が拓かれたと言える。 3 ポリチオエステルの酵素触媒による新規合成法の開発と性質 メルカプトカルボン酸をモノマーとして酵素法により重合を行い、分子量数万のポリチオエステルが効率よく得られることをはじめて見出した。得られたポリチオエステルは相当するオキソエステル体に比べて高融点と耐有機熔媒性が認められた。さらに、新規ポリチオエステルの酵素合成とケミカルリサイクルとして、ジメルカプタン(アルカンジチオール)とアルカンジカルボン酸の組合せによる一連のポリチオエステルの酵素合成を達成した。
|