研究概要 |
本年度に得られた研究成果は以下の通りである. 1.鉄イオンセンサー蛋白質Irrにおけるヘム結合当量とその親和性 根粒バクテリア内で,鉄イオン濃度に依存したポルフィルン合成の制御を行うIrrのヘム結合当量とその親和性を検討した.Soret帯の吸光度変化より,1分子のIrrは2個のヘムを結合することが明らかとなった.また,そのヘム結合部位付近に存在すると想定されているTrpの蛍光消光の実験から,2個のヘム結合部位のヘム解離定数は約20nMと130nMであると決定でき,現在まで報告されているヘム蛋白質よりもはるかに低いヘム親和性であることが示された. 2.鉄イオンセンサー蛋白質Irrにおけるヘム結合部位の推定 Irrにおけるヘム結合部位を同定するため,共鳴ラマンスペクトルと磁気円二色性分光法を用いた.鉄3価のヘムが結合した場合には,従来のアミノ酸置換変異体の実験から,Cys29が配位していると予想されていたが,今回初めて共鳴ラマンスペクトルにおいてFe-S伸縮振動を333cm^<-1>と同定できた.さらにこのラマン線はCys29をAlaに置換した変異体では消失することから,鉄3価のヘムへのCys29の配位が確認できた.一方,鉄2価のヘムが結合した場合には,Hisの配位が示唆されていたが,どのHisの配位かは同定されていなかった.アミノ酸配列中のHisをそれぞれ置換したIrr変異体すべてにおいて野生型と同様な吸収,共鳴ラマンスペクトルが観測されたが,磁気円二色性分光スペクトルにおいては,His32とHis135の置換体で野生型と有意なスペクトル差が認められ,鉄2価のヘムにおいてはこれらのHisが配位していると考えられた.
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