テトラフェニルポルフィリン誘導体に4つのパーメチル化シクロデキストリンを結合した新しいホスト分子、CD4TPP、を合成した。この分子は水に可溶でテトラフェニル・ポルフィリン・スルホン酸アニオン(TPPS)と錯体を生成する。錯体生成の過程を滴定によって検討した結果、以下の興味ある知見が得られた。 1.生成する錯体の化学量論はCD4TPP/TPPS=1/1である。 2.錯体中のポルフィリン間の電子的相互作用は小さく、各構成ポルフィリンの歪みなど構造変化も無視できる。 これらの結果及び分子モデルの検討から、得られた錯体は単純な一対一錯体ではなく(CD4TPP)n(TPPS)nの組成を持つものと考えられた。このnの値を決定するためにESIマス・スペクトルによる分子量推定、および小角X線散乱法による錯体の形状測定を行った。その結果、n=2であることが明らかとなり、錯体は2つのTPPSが2つのCD4TPPをそのシクロデキストリン部位で結合し、計4つのポルフィリン構造が環状に配置された構造を持つと推定された。同様の自己組織化錯体形成はCD4TPP、TPPSのポルフィリン部をZn錯体としても起こるばかりでなく、シクロデキストリン・ホストのスペーサー部をビフェニルにしたシクロデキストリン2量体でも起こることが確認された。更に、Znポルフィリンとフリーベース・ポルフィリンを含む混合錯体では前者から後者への錯体内エネルギー移動が起こることが明らかとなった。
|