従来申請者らが研究してきたピラジン部位を分子認識点として2量化ZnTPP誘導体の自己組織化するポルフィリン9量体について、集合体中で起きるエネルギー移動反応機構の詳細について分光学的検討に加えてエネルギー移動の動的挙動の解明を試みた。TPP型の中心free-baseポルフィリン(acceptor)とピラジン部位を1から30のメチレン鎖によって結合した一連のポルフィリンを合成し、これら全てのポルフィリンが塩化メチレン中でほぼ定量的に自己集合体を形成し、その中でZnTPP部位(donor)から中心ポルフィリンへのエネルギー移動が起こることを確認した。そのエネルギー移動効率は予想通りメチレン鎖長の伸張に伴って低下するが、その依存性は単純なものではなかった。そこで、この自己組織化ポルフィリン多量体内エネルギー移動系の動的特徴を明らかにするために、蛍光寿命の測定を行った。その結果エネルギー移動の速度とdonor-acceptor間距離への依存性は、メチレン両末端鎖長を自由運動をするメチレン鎖に対する統計的平均距離として予想されるものとして評価した場合、エネルギー移動のF嗷sterモデルと良好な一致が得られることが明らかとなった。 また、昨年報告したシクロデキストリンの分子認識を利用したテトラフェニル・ポルフィリン・スルホン酸アニオン(TPPS)自己組織化系については、この系にビオローゲンを結合した分子の合成に成功しし、今後、この分子を用いた電荷分離過程を含む一連の光化学14反応系をシミュレート可能なポルフィリン組織系の構築が可能となった。
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