昨年度までの研究において報告したアンテナ機能を有する光合成系モデルに対して、更に光電荷分離機能を付加したモデルの構成を行った。この目的で、中央のfree-baseポルフィリンに3つのピラジン基と一つのナフトキノン基を有する化合物の合成を新たに行った。 この鋳型ポルフィリンは予想通り塩化メチレン中で3つのピラジン部位を分子認識点としてZnTPP誘導体の2量体を自己組織化してほぼ定量的にポルフィリン7量体を構成することを確認した。ナフトキノン基を持たない参照化合物も同様に合成し、その電子スペクトル・蛍光スペクトルの比較測定からこのポルフィリン7両体はポルフィリンの数に相当するアンテナ集光機能を有し、中央のfree-baseポルフィリンへほぼ80%の効率でエネルギー移動を起こす。 た、アンテナ・ポルフィリンを付加しない状態のfree-baseポルフィリンの蛍光量子収率はナフトキノン基を有するもので0.076となり、キノン部位を持たない場合の量子収率0.18に比べて大幅な低下が見出されfree-baseポルフィリンの励起状態からナフトキノン部への電子移動による電荷分離が起こっていることが確認された。更に、これら両free-baseポルフィリンにZnTPP2量体をアンテナ部位として付加したポルフィリン組織体でも同様にca.65%の効率で電荷分離を起こしていることが蛍光測定から明らかとなった。これらの結果から、本ポルフィリン集合体においては一つの電荷分離反応中」心ポルフィリンあたり、アンテナ系を持たないものに比べて照射光エネルギー利用効率が8倍以上向上していることが明らかとなり、光エネルギーの電荷分離エネルギーへの変換においてアンテナシステムが有効に作用していることを示すことが出来た。 これらの結果は、このポルフィリン集合体システムにおいては集光、電荷分離機能はそれぞれ独立して評価することが可能であることを示している。
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