共連続構造は広い接触界面を有し、電荷分離を伴う電子デバイスに必須の構造である。低温でナノ共連続構造を有するイオン(荷電)パスと電子パスを作製し、プラスチック色素増感太陽電池によりその有効性を実証することを目的とする。 1)電子パスの低温作製:チタニアナノ粒子を450℃で焼成するとチタニアナノ結晶がネッキングし電子パスを形成する。しかし150℃以下の低温ではネッキングは十分ではなく光電流も低い。チタニアナノ詰晶A(細孔20-30nm)に2-5nmの細孔を有するチタニアBを添加し150℃加熱での電子パスの構築を試みた。B成分を多くすることにより光電流の増大を観測できた。ポーラスチタニア内の電子拡散定数を測定したところ(光変調光電流法)B成分の増大とともに電子拡散定数が若干減少する傾向にあった。チタニア膜中の粒界が増大したことにより電子拡散定数が減少したと考えられた。光電流の増大は色素吸着量の増大で説明できた。一方、このチタニアナノ結晶集合体に低加速度EBを一括照射することによってチタニア層の温度を上げることなく、電子拡散定数をあげることができることを新しく見出した。これにより低温で電子パスの構築が可能となった。またA粒子とB粒子の混合により色素吸着量を増大することによって光電流を増大させることができるという色素増感太陽電池の効率を上げる方法を新しく見出すことができた。 2)イオンパスの形成:ポーラスチタニア層を450℃で作製する場合には、チタニアペースト中のポリマーが加熱時に分解し共連続なイオンパスとなる。しかし150℃程度の低温ではイオンパスを形成することはできない。今回二つの方法を試した。一つはチタニア針状結晶をチタニアナノ結晶に混合することによってチタニアナノ結晶内に隙間を作りイオンパスを構築する方法、および酸化チタンナノ結晶と酸化亜鉛ナノ結晶を混合して電極を作製し、その後に酸化亜鉛ナノ粒子を希塩酸で取り去ることによりチタニア層内にイオンパスを構築する方法である。どちらの方法でも、チタニアポーラス層中のイオン拡散限界電流値が増大することが実験的に確認できた。これらの方法はイオンパス作製に有効である事を実証できた。
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