低温焼成チタニアの性能向上を、イオンパスの作製と電子パスの作製の観点から議論した。 1)ポーラスチタニア電極中のイオン拡散パスの構築(シミュレーション) ポーラスチタニア電極内のナノポア内でイオン拡散が阻害されるとどの程度太陽電池性能に影響を与えるかを見積もるために、太陽電池セルをモデル化しシミュレーションを行った。その結果、不揮発性電解液であるイオン液体を使った場合、I_3^-の拡散係数が10^<-6>cm^2/secから10^<-7>cm^2/secの間でJscはイオン拡散定数に大きく依存することがわかった。実測したバルク電解液中でのイオン拡散定数は10^<-6>cm2/secから10^<-7>cm2/secの間であり、ポーラスチタニア電極中でのイオン拡散の低下が直接Jscの低下に繋がることがわかった。一方アセトニトリル系電解液中でのI_3^-の拡散係数は10^<-7>cm2/secから10^<-5>cm2/secにかけて、Jscはイオン拡散に大きく依存する。アセトニトリル中のイオン拡散定数は10^<-5>cm2/sec程度であるため、チタニア電極細孔でのイオン拡散低下は、イオン液体ほど大きくはないが同じくJscに影響を与える可能性があることがわかった。 2)電子パスの作製:二酸化炭素超臨界中での色素吸着による電子パスの作製の試み 低温焼成チタニア電極の界面トラップを消去し電子拡散定数を上げることにより太陽電池特性の向上を試みた。Ru色素吸着を二酸化炭素超臨界中で行った(A)。通常の浸漬方法(B)に比較しJscが向上した。色素吸着量、電子拡散係数、電子寿命を測定したところ、(A)で色素吸着量の向上は見られたが、電子拡散定数、電子寿命に大きな変化は見られなかった。これらの結果から、(A)ではナノポアまで色素が有効に吸着され色素被覆率は向上しているが、チタニア粒界に存在するトラップに対するパッシベーションには効果がないことがわかった。Jsc向上は色素吸着量の向上によってもたらされると結論した。
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