研究概要 |
本研究は従来の高温固相反応法では合成が困難な異種金属置換型複合マンガン酸化物を低温でのソフトケミストリー手法を用いて合成することを目的として実施した。得られた複合マンガン酸化物の化学組成や結晶構造などを調べ、さらにリチウム二次電池用新規電極材料として性能評価した。 1.水溶液法により合成したバーネサイト型コバルト置換マンガン酸化物K_x(Mn_<1-y>Co_y)O_2・zH_2O(x=0.14,y=0〜0.22,z=〜0.2)を600℃で加熱することでコバルト置換ホランダイト相へ相転移することを見い出した。バーネサイト型K_<0.14>(Mn_<0.78>Co_<0.22>)O_2・0.28H_2Oを350〜450℃で加熱することにより、バーネサイト/ホランダイト複合相が生成し、この複合相は優れた放電および充放電特性を示すことが分った。特に350℃焼成複合体が10サイクル中170〜205mAh/gの容量が得られた。 2.エマルションドライ法により層状LiNi_<0.5>Mn_<0.5-x>Ti_xO_2固溶体をx=0〜0.3の範囲で合成に成功した。この少量のTiドーピングによりLi層中へのNiイオンのカチオンミキシングが減少し、構造が安定することが分った。この結果、x=0.1〜0.2のTi固溶により約170mAh/gの容量下で50サイクル以上安定した充放電が可能であった。さらに、Ti固溶によりLiイオンの拡散度および熱安定性が増すことを見い出した。 3.[Ni_<1/3>Co_<1/3>Mn_<1/3>](OH)_2前駆体を用いて170℃、4日間、LiOH水溶液中で水熱処理することにより層状Li[Ni_<1/3>Co_<1/3>Mn_<1/3>]O_2の合成に成功した。この合成物の800℃加熱処理物は150〜160mAh/gの大きい容量下に50サイクル以上充放電が可能であった。
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