研究概要 |
本研究は従来の高温固相反応法では合成が困難な二、三の異種金属型複合マンガン酸化物を水熱法、エマルションドライ法およびスプレードライ法のソフトケミストリー手法を用いて合成することを目的として実施した。得られた複合マンガン酸化物の化学組成や結晶構造などの基礎物性を調べ、さらにリチウム二次電池用新規電極材料として性能評価した。 1.スピネル構造の(M_XMn_<1-X>)_3O_4(M=Co, Fe)を出発材として用いて、170℃で水熱反応により斜方晶系のo-LiM_XMn_<1-X>O_2(M=Coでは0<x≦0.14,M=Feでは0<x≦0,15)の固溶体の合成に成功した。この水熱反応過程はMnイオンとLi^+イオンとのイオン交換と次に起こるスピネル構造から斜方晶構造への相転移によることを明らかにした。得られた新しいCo置換固溶体(x=0.1)は180mAh/gの容量の下に優れた充放電特性を示すことを認めた。 2.Li過剰の層状Li_<1+X>[Ni_<0.5>Mn_<0.5>]O_2をエマルションドライ法を用いて合成した。X線および中性子回折法、並びにX線端吸収スペクトル法による構造解析から過剰のLiは遷移金属屑の金属を置換したLi[(Ni_<0.5>Mn_<0.5>)_<1-X>Li_X]O_2であることを見出した。この過剰Liにより構造的オーダリングが改善され、Liの化学拡散係数が上昇し、またLiの挿入/脱離に伴う構造変化が抑制された。この結果、このLi過剰層状金属酸化物は180mAh/gの高容量化の下で優れたサイクル特性を示すことが分かった。 3.層状Li_<1+X>(Ni_<1/3>Co_<1/3>Mn_<1/3>)_<1-X>O_2(0≦x≦0.17)をスプレードライ法により合成し、その電気化学特性と構造安定性を調べた。この層状酸化物は六方晶系を有し、Li過剰量xとともに格子パラメータが減少することが分かった。このLi過剰酸化物(x=0.17)は50サイクル後でも179mAh/gの放電容量を維持し、化学量論組成の酸化物(x=0.00)の放電容量141mAh/gより大きいことを認めた。X線回折測定からこの容量の増大は構造安定化によることを明らかにした。
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