研究概要 |
代替エネルギー開発において、リチウム2次電池のような蓄電技術は石油に比べ取り扱いにくいエネルギー源を安全化する一つの候補技術である。本研究は、大型化に適した安価、毒性が低いスピネル型リチウムマンガン系酸化物の結晶欠陥に注目して分子設計を行うことにより、リチウムイオン電池正極として容量特性およびレート特性の向上をはかることを目的としている。 平成16年度は、前年での研究成果を踏まえ5V級正極LiNiO.5Mnl.504の酸素欠陥について合成法の観点から構造制御を特に検討した。その結果、スピネル構造内の酸素欠陥構造は高温・低温相の2つの相を有していることがはじめて明らかとなった。特にこの相転移について、詳しく検討し1次転移反応で起こることを明らかにし、熱力学的計算から欠陥生成エネルギーを導出した。この相転移は単なる不連続な酸素の欠陥生成反応ではなく、カチオンであるNi,Mnのorder-disorder反応も包含することが明らかになった。 これら得られたサンプルについて、電気化学特性を測定したところ、高温相であるLiNiO.5Mn1.504は低温相に比べて非常に高いレート特性を有することが分かった(レート3Cに対し、60mAh/g,低温相の3倍)。さらに分子動力学法による検証を行い、拡散障壁が高温相においてNiとMnの構造内配列が無秩序化することで低下しレート特性向上することとの対応関係が示唆された。 このような結果から、カチオンNi,Mnの構造内配列を制御することで、最適な高出力型のリチウムイオン電池材料を分子設計する指針を得ることが出来た。
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