研究概要 |
代替エネルギー開発において、リチウム2次電池のような蓄電技術は石油に比べ取り扱いにくいエネルギー源を安全化する一つの候補技術である。本研究は、大型化に適した安価、毒性が低いスピネル型リチウムマンガン系酸化物の結晶欠陥に注目して分子設計を行うことにより、リチウムイオン電池正極として容量特性およびレート特性の向上をはかることを目的としている。 本研究では特に5V級正極LiNi_<0.5>Mn_<1.5>O_4について、酸素欠陥を導入することでレート特性を向上できることを明らかにした。(レート3Cで3倍以上の高容量を確保)。これは、酸素欠陥の導入により結晶構造内のNi, Mn秩序配列を無秩序形に変化することができるためである。このような秩序、無秩序配列の制御は酸素分圧と焼成温度に敏感であり、高温相は無秩序配列型であり、低温相は秩序配列型となる。このような結果から、カチオンNi, Mnの構造内配列を制御することで、最適な高出力型のリチウムイオン電池材料を分子設計する指針を得ることが出来た。 より定量的な構造と電池特性の関係解明を、理論的計算手法によって行なった。Nudged-elastic-band法により遷移状態を考慮した第一原理計算によって、スピネル中でのリチウム拡散に伴う活性化エネルギーの見積もりを行なった。その結果、Ni/Mnがオーダリングすることによって、0.38eVおよび0.33eVの活性化エネルギーからなる2つの拡散パスが存在することが明らかになった。これは、拡散係数にして約10倍の変化をもたらす。従ってNi/Mnのオーダリング形成は拡散に不利な伝導パスを形成させてしまうため、レート特性に乏しいことが定量的に示された。酸素欠陥の導入はNi/Mnオーダリングを解体するため、2つの伝導パスによる活性化エネルギーが平均化され実験で示された高いレート特性を発現するものと考えられる。
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