超短パルスレーザー照射によるガラス内部へのナノ構造形成と三次元集積化

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15350121
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 平尾 一之 京都大学, 工学研究科, 教授 (90127126)
• 研究分担者: 藤田 晃司 京都大学, 工学研究科, 助手 (50314240)
• キーワード: ガラス / フェムト秒レーザー / ナノ加工 / 三次元集積化 / 周期構造

研究概要

申請者らは近年、フェムト秒レーザーの集光照射を用いて、ガラス内部に光の回折限界を超える精度で屈折率変化、イオンの価数変化、金属の析出、結晶化などの物理的・化学的性質の変化を誘起させることに成功した(誘起構造)。これらの現象を利用すると、三次元光導波路や三次元超高密度光メモリーなどの新規な光デバイスとしての応用が期待される。
平成15年度は、このような誘起構造に加えて、ガラス内部に周期的なナノ構造を形成させることを試みた。具体的には、フェムト秒レーザー光の干渉や偏光特性を活用して自己組織的に周期的ナノ構造を形成した。一つのフェムト秒レーザーをシリカガラス内部に集光照射し、その集光点近傍をオージェ電子分光の反射像で観察すると、数十nm周期のナノ構造が形成されていた。この結果はフォトンとプラズモンの相互作用を想定したモデルで説明することができ、フェムト秒レーザーと透明物質の相互作用に関する新たな知見が得られた。同様の効果は、シリカガラスに限らず、サファイアなどの単結晶においても確認された。一方で、二つのフェムト秒レーザービームの干渉を利用すると、ガラス及びポリマーなどの透明物質内部にサブミクロンオーダーの周期構造が形成され、その周期長が入射光の角度に依存して変化することがわかった。また、回折ビームスプリッターを用いて複数のフェムト秒レーザーを干渉させると、1パルスの照射で複雑な形状のナノ構造の形成が観察された。平成16年度は、これらのナノ構造をガラス内部に三次元的に集積化する技術を開発する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Shimotsuma, P.G.Kazansky, J.Qiu, K.Hirao: "Self-Organized Nanogratings in Glass Irradiated by Ultrashort Light Pulses"Physical Review Letters. 91. 247405-1-247405-4 (2003)
• [文献書誌] 平尾 一之: "酸化物ガラスの光物性と三次元回路応用"光学. 32・5. 290-293 (2003)
• [文献書誌] 武島延仁, 黒岩 裕, 平尾一之: "超短パルスレーザーを用いたCdS_xSe_<1-x>微粒子のガラス中への析出"NEW GLASS. 18・2. 37-40 (2003)
• [文献書誌] G.Qian, J.Guo, M.Wang, J.Si, J.Qiu, K.Hirao: "Holographic Volume Gratings in Bulk Perylene-Ornage-Doped Hybrid Inorganic-Organic Materials by the Coherent Field of a Femtosecond Laser"Applied Physics Letters. 83. 2327-2329 (2003)
• [文献書誌] S.Katayama, M.Horiike, M.Urairi, K.Hirao, N.Tsutsumi: "Structures Induced in Polysilane and Thin Polysilane Layer coated Polymer Films by Irradiation of Femto-Second Laser Pulse"Chemical Physics Letters. 373. 140-145 (2003)
• [文献書誌] S.Katayama, M.Horiike, M.Urairi, K.Hirao, N.Tsutsumi: "Periodic Bell-Shaped Upheaval Structure on Surface of Polycarbonate by Irradiation of Femtosecond Laser Pulse"Japanese Journal of Applied Physics. 42. 6926-6930 (2003)
• [文献書誌] 平尾 一之, 他18名: "基礎から学ぶナノテクノロジー"東京化学同人. 276 (2003)