これまでに、炭酸ガスレーザー極細化法はポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ナイロン6などの熱可塑性高分子に適用され、これらの繊維を極細化できることを見出した。さらに、新規に開発した極細化装置は、モノフィラメントの超極細繊維を連続的に高速で巻きとることが可能となった。平成15年度の成果を踏まえ、平成16年度は以下のような成果が得られた。 1.炭酸ガスレーザー極細化法で得られたPET超極細繊維をゾーン延伸・熱処理すると結晶性および配向性は向上し、その力学特性は高強度・高弾性率繊維に匹敵する。 2.炭酸ガスレーザー極細化した超極細繊維を高速で巻き取りながら熱風で加熱するとゾーン延伸PET超極細繊維とほぼ同等の配向性が得られ、その力学特性も向上する。この手法により、レーザー極細化と延伸を連続的に行うことが可能となった。 3.生分解性のポリ乳酸および生体吸収性のポリグリコール酸などの繊維にも炭酸ガスレーザー極細化法は有効であり、約2μmの超極細繊維が得られた。また、これらの超極細繊維もゾーン延伸することで結晶性や配向性は向上する。 4.新たに開発した不織布作製用の炭酸ガスレーザー極細化装置では、レーザー極細化で得られた超極細繊維を巻き取らずにネットコンベヤで連続的に捕集することで、綿状のPET超極細繊維を作製できる。この綿状のPET超極細繊維を圧縮成形することで、容易にPET極細繊維の不織布にすることができる。この不織布は、メルトブローで作製される不織布に比べ、均一な繊維径の長繊維から成り、ショット玉と呼ばれる樹脂の塊を含まない。炭酸ガスレーザー照射で得られた極細繊維で作製した不織布は、他の方法で得られる不織布とは異なり、その作製過程において薬品などを使用しておらず、生体への応用に適した不織布であるといえる。 今後、炭酸ガスレーザー極細化繊維の不織布は止血シート、組織補填剤、組織再生足場などに応用でき、再生医療における有用な医用器材としての開発も期待される。
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