研究概要 |
平成15年度の成果 1.PET極細繊維の延伸・熱処理 レーザー出力17.8W/cm^2でレーザー照射し、21,000m/minで巻き取ると繊維径2.8μmの超極細繊維が得られる。この超極細繊維の複屈折は0.096であり、広角X線回折写真には非晶ハローが観察され、この超極細繊維が低配向、低結晶性である。このことは、PET超極細繊維の延伸・熱処理が可能なことを意味する。そこで、ゾーン延伸を90℃で行い、次に180℃でゾーン熱処理した。その結果、繊維径1.6μmの超極細繊維が得られ、複屈折は0.254、ヤング率は18.9GPaおよび強度は1.3GPaに達した。 2.ポリ乳酸繊維の極細化および延伸・熱処理 未延伸ポリ乳酸繊維(繊維径:75μm)は巻取り速度とともに繊維径は細くなり、800m/minで巻き取ったとき、繊維径は1.45μmまで極細化された。また、この繊維を延伸・熱処理すると、その繊維径は540nmに達した。 3.アラミド繊維のレーザーによる延伸 延伸性のきわめて低いアラミド繊維(テクノーラ【○!R】)のレーザー延伸では、レーザー出力とともにその延伸倍率は増加し、8wのレーザー照射で約16倍まで延伸できた。その延伸テクノーラの繊維径は約8μmであった。 平成16年度の成果 4.炭酸ガスレーザー極細化・熱風加熱法 炭酸ガスレーザー極細化した超極細繊維を高速で巻き取りながら巻き取りリールを熱風で加熱するとゾーン延伸PET超極細繊維とほぼ同等の配向性が得られ、その力学特性も向上する。この手法により、レーザー極細化と延伸を連続的に行うことが可能となった。 5.ポリグリコール酸(PGA)の極細化 生体吸収性であるPGA繊維にも炭酸ガスレーザー極細化法は有効であり、約2μmの超極細繊維が得られた。 6.レーザー極細化で得られたPET極細繊維の不織布化 新たに開発した不織布作製用の炭酸ガスレーザー極細化装置では、レーザー極細化で得られた超極細繊維を巻き取らずにネットコンベヤで連続的に捕集することで、綿状のPET超極細繊維を作製でき、これを圧縮成形すると、PET極細繊維の不織布を作製できる。この方法で得られた不織布は、作製過程において薬品などを使用しておらず、止血シート、組織補填剤、組織再生足場などに応用でき、再生医療における有用な医用器材としての開発も期待される。
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