球状ミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体試料に室温で5000気圧まで圧力を加えて、構造の規則性の変化を調べた。この目的のため、超高圧圧力ジャンプ装置を作製し、これを用いてシンクロトロン小角X線散乱実験を行った。その結果、特異的な挙動がみられた。すなわち、常圧〜1000気圧の圧力印加では、規則性は悪くなるが、2000気圧〜5000気圧では規則性が向上した。このような規則性の変化は圧力印加時や圧力リリース時に起こるのではなく、圧力印加中に起こっていることがわかった。また、圧力印加による規則性の向上のためには、初期構造がある程度規則的でなければならないということもわかった。 一方、ラメラ構造を形成するブロック共重合体試料、ならびにシリンダー構造を形成するブロック共重合体試料の場合には、室温で5000気圧まで圧力を加えても規則性の変化が起こらないことがわかった。また、ジャイロイド構造を形成するブロック共重合体試料の場合は、若干ではあるが、規則化することがわかった。 次に秩序-無秩序転移温度に与える圧力の影響を調べた。球構造を形成するブロック共重合体試料は温度上昇にともなって、球の配列規則性がランダムになり、ある温度以上で完全に無秩序となる。この転移温度の圧力依存性を検討したところ、圧力とともに転移温度が上昇した。このことは、転移にともなう潜熱吸収を示唆している。これまで潜熱は微小なためその測定は不可能であったが、本研究の成果により、熱測定では判断のつかなかった転移に対してもその熱的特徴を推定できた点で意義深い。
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