シリンダー状ミクロ相分離構造を形成する部分水添したスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体試料を予め流動場を用いて一軸配向させておいた試料を用いて、一定の圧力(常圧〜2000気圧)を印加した状態で室温から180℃まで2℃/minで加熱した。その過程でシリンダーの配向がいかに変化するかを調べた。この目的のため、昨年度すでに作製しておいた超高圧圧力ジャンプ装置を用いてシンクロトロン小角X線散乱実験を行った。測定は、高輝度光科学研究センター(SPring-8)の小角X線散乱ビームライン(BL-45XU)で行った。その結果、特異的な挙動がみられた。すなわち、室温からある一定の温度までは、配向状態は変化せず、その後、徐々にではあるが、配向が自発的に増進した。さらに加熱を続けると、ある温度を境に配向は急激に崩れ、一気に無配向状態へと変化した。これらの特徴的な温度が、圧力とともにどのように変化するか調べたところ、前者は、圧力とともに減少し、後者は圧力とともに僅かに増加する傾向が見られた。前者は、圧力の増加とともに「格子欠陥」の消滅がより低温から起こりやすくなったためと考えられる。一方、後者については、当初、秩序-無秩序転移温度と考えられた。すなわち、秩序-無秩序転移温度以上に試料を加熱すると、シリンダー構造自体が消滅するので、当然無配向状態になる。秩序-無秩序転移温度は正の圧力依存性を持っているため、上記のような結果になったと解釈されたが、その説明は妥当ではないことが判明した。すなわち、実際の秩序-無秩序転移温度はもっと高温側にあり、それよりも低温で、すなわち、まだ充分シリンダー構造が安定に存在し得る温度であるにも拘らず、配向は乱れてしまう、という結論であることが判明した。
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