研究課題
液晶組成物の構成分子のキラリティによるHelical Twisting Power (HTP)を大きくすると、分子配列に二重ねじれ構造が生じ、トポロジー的に欠陥をもつブルー相が約1Kの温度尾範囲で生成した。このブルー相中で光重合性モノマーを重合すると、本来ブルー相を示さない低温においてもブルー相が保持され、温度範囲が著しく拡大した。その拡大の程度は、モノマーの種類に強く依存し、比較的バルキーなアルキル鎖を側方置換基として有するアクリル酸エステルを用いた場合に効果的に温度範囲が拡大した。また、1官能性モノマーと2官能性モノマーの比率にも大きな影響が確認され、約7/3モル比で最大の拡大の効果を示した。ブルー相にはブルー相Iとブルー相IIがあり、前者が体心立方構造、後者が単純立方構造をとることが知られている。これまで、ブルー相Iの温度範囲の拡大には成功していたが、ブルー相IIは元の温度範囲が極端に狭いため成功していなかった。今回重合開始剤や重合プロセスを精密に制御することにより初めてブルー相IIの温度範囲の拡大に成功した。ブルー相はキラル分子によるねじれ力と分子配列が連続につながろうとする空間トポロジーの「競合」の結果生ずるとされ、フラストレート相の一種として分類される。液晶には、ブルー相以外にもフラストレート相が多数存在し、独特の特徴を有している。本研究で見出された高分子安定化効果は、「競合」のバランスを大きく変えたことによると推察されるが、このメカニズムが他のフラストレート相に適用できれば、新規な機能性物質の創出につながると期待される。
すべて 2004
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