光学波長オーダーの三次元周期構造を自己組織的に形成する液晶ブルー相を広範囲の温度域で安定化した高分子安定化ブルー相の電気光学効果について検討をおこなった。基板面に対して平行方向に電場を印加できる櫛歯形電極を片内面にもつガラスセルを用いて、電場方向を光軸とする複屈折の大きさを測定した結果、電場強度の2乗に比例する複屈折が誘起されるKerr効果の発現が確認された。観測されたKerr係数の大きさは、ニトロベンゼンの約170倍で、有機物としては極めて大きい。電場ON-OFFに伴う応答時間は、ON時で100ナノ秒、OFF時で10ナノ秒オーダーであり、一般に液晶テレビなどで実用化されている液晶の応答の100倍以上高速であった。この優れた性能を表示素子として応用できれば、従来の液晶表示素子の欠点である、低応答速度とラビングプロセスに伴う低歩留まりを一挙に解決できると期待される。そのためには、ブルー相特有の着色を無くす必要がある。本研究では、ブルー相の着色の原因である可視光域のブラッグ回折を分子配列のねじれピッチを短くすることにより紫外域にシフトさせ無着色とした。これにより、高分子安定化ブルー相を用いた高速・ラビングフリー液晶表示素子への応用の可能性が高まった。 また、高分子安定化ブルー相のフォトニック結晶としての性質を調べるため、レーザー発振実験を行った。高分子安定化ブルー相中にレーザー色素を添加し、可視レーザにて励起するとブルー相の3次元周期に対応した波長で線幅の狭い発振が観測され、フォトニック結晶としての優れた特性が確認された。
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