研究概要 |
液晶ブルー相(Blue Phase : BP)は、100nmオーダーの三次元周期構造をとる液晶相として知られ、近年、発現温度範囲の拡大、三次元フォトニック機能、高速電気光学効果などが見いだされ注目されている。著者らはBP Iの温度範囲が微量の高分子によって拡大される高分子安定化効果を見いだし、その機能性発現について報告してきた。本研究では、BPの中でも最も発現温度範囲が狭いことから安定化が十分に達成されていないBP IIに着目し、その温度範囲の拡大、構造解析および電気光学特性について検討した。 高分子安定化BP IIは、BP II発現温度領域内で定温条件の下、キセノンランプでin-situ光重合を行うことにより調製した。これらの操作により得られた液晶相を共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)(OLYMPAS Co., Ltd.)により観察した。反射スペクトル測定はマルチチャンネル検出器(Hamamatsu Photonics Co., Ltd.)により行った。BP IIの電気光学応答時間を評価するため、光スイッチング測定を行った。高分子安定化ブルー相IIにおける共焦点レーザー顕微鏡像およびフーリエ変換像から約97nmの周期幅が確認できた。高分子安定化BP IIの(100)面に起因していると思われる回折ピーク波長(441nm)と441nmにおける屈折率1.59をブラッグの式に適用した時の格子定数は69nmであった。観察像により得られた周期幅は格子定数の√<2>倍にほぼ一致した。ここでBp II格子構造のモデルを適用した結果、CLSMで得られた周期幅は(110)面における液晶分子配列により生じる屈折率差により生じたことが示唆された。 また、293Kにおける高分子安定化ブルー相IIの立ち上がりおよび、立ち下がり過程における光スイッチング曲線から応答時間を測定した。応答時間は、スイッチング曲線における電場印加および、除去後の透過光強度の変化量が全変化量の10〜90%となる時間として評価した。高分子安定化ブルー相IIの立ち上がりおよび立下がり応答時間はそれぞれ90μs、31μsであり、電気光学効果の高速応答が確認された。
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