研究概要 |
本研究ではDNAの導電性を評価するために,DNA脂質複合体であるDNA-CTMA(Hexadecyl-trimethylammonium Chloride)薄膜を用い,有機半導体の実験手法であるサンドイッチ形デバイスを用いてDNAの導電性評価を行った。また,ダブルヘテロ型有機LEDのホール輸送層,発光層,電子輸送層に用い導電性及び発光特性を評価しDNAの有機半導体材料としての可能性を評価した。10Vの印加電圧においてDNA-CTMA単層デバイスではJ=590mA/cm^2の注入電流が観測され,DNA-CTMAには導電性があることが分かった。また,10Vの印加電圧においてホールしか伝導しないTPDをDNA-CTMA層と陰極の間に挿入してDNA-CTMA内にホールのみを輸送させた素子ではJ=11mA/cm^2,電子しか輸送しないPOXDをDNA-CTMA層と陽極の間に挿入してDNA-CTMA内に電子のみを輸送させた素子ではJ=0.02nA/cm^2の注入電流が観測され,DNA-CTMA薄膜には本質的にホールも電子も輸送するバイポーラ性を有することが分かった。さらに,DNA-CTMAをホール輸送層に用いたダブルヘテロ型有機LEDでは最大EL量子効率η_<ext>〜7.0±0.2%の高効率な値が得られDNA-CTMAはホール輸送層に適していることが分かった。 さらに,より基本的なDNAを構成している4種類の塩基(Adenine, Cytosine, Guanine, Thymine)単層蒸着膜について同様の評価を行った。10Vの印加電圧においてAdenine蒸着膜はJ=180mA/cm^2,Cytosine蒸着膜はJ=0.35mA/cm^2,Guanine蒸着膜はJ=10mA/cm^2,Thymine蒸着膜はJ=2.3mA/cm^2の注入電流が観測され,塩基蒸着膜には明確に導電性があることが分かった。本研究では,さらにTime of Flight法による移動度測定を試みたが,分散型の波形しか観測されず,DNA薄膜中には多くのトラップの存在が示唆された。
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