研究概要 |
以下の3種類の方法でErSiO自己組織化薄膜作製を試み、特徴的なフォトルミネセンス特性を得た。 1.多孔質シリコンを用いる方法:ナノメータサイズの孔を持つ多孔質シリコンの孔に液浸法でErイオンを導入し、熱処理をする。 2.ゾルゲル法:Erを含むゾル液とSiを含むゾル液を混合し、これをSi基板上に塗布し熱処理をする。 3.有機金属分子線エピタキシー法:TEOSとEr(TMOD)_3を原料として、Si(100)基板上にEr, Si, Oからなる薄膜を成長し、その後、熱処理をする。 上記の全く異なった3種類の方法で試料を作製したが、プロセス条件を最適化することにより,ErSiO自己組織化薄膜に特徴的なシャープなErの1.54μm発光スペクトルが得られた。 明らかになったプロセス条件の重要なポイントは以下のとおりである。 1.出発試料のEr, Si, O原子が、ほぼ均一に適切な比で混合している。 2.前熱処理として、試料を800-900℃程度で適度に酸化させ、Er-O, Si-O結合を作製する。 3.後熱処理として、約1200℃の高温で酸素のない雰囲気(Ar雰囲気など)で熱処理し、過剰のO原子を除去するとともにEr-Si-Oの結晶化を進める。 作製されたErSiO自己組織化薄膜のEr1.54μmフォトルミネセンス(PL)特性が、従来のErドープSiのPL特性とは全く異なり、以下の特徴的な特性を示すことを見出した。 1.スペクトルは非常にシャープで、特に、室温の半値幅は7nm以下であり、ErドープSiではこれまで観測されていない小さな値である。 2.20Kから室温までの発光強度の減少が1/2-1/3と小さい。 3.蛍光寿命が20Kから室温まで100μs以下のほぼ一定値を示す。 4.Erの密度が10%以上と高密度であるにもかかわらず発光強度は強く、濃度消光はほとんどない。
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