研究課題
GA(遺伝的アルゴリズム)は、自然界における生物の適応性を数学的モデルにより表したアルゴリズムであり、スキーマと呼ばれる概念が最も重要になる。スキーマとは、一言で言えば環境に適応する良い遺伝子のことである。超多重度を有する系では、何が最適であるかを見出すこと、あるいは最適であることを証明することは、極めて困難である。それ故、複雑なプロセスに対して適応的解を見つける必要性が高くなる。GAは、この様な問題には非常に適したアルゴリズムである。しかしながら、本研究では適応的解では役に立たない。本研究では、スキーマを見つけて適応解を見つけ、その適応解の中から構造精密化を行い、最適解を得なければならない。いわば適応的解を最適解に成長させる必要がある。成長プロセスで、MEM(マキシマム・エントロピー法)が極めて強力な方法を提供すると予想していたが、本研究を進めていく過程でMEMそのままではなく、MEMを発展させた差分MEM(DMEM)が非常に強力な方法であることが分かった。DMEMには、いくつかのレベルがある。大きく分けて、全ての原子を仮定した構造モデルより計算される結晶構造因子と観測結晶構造因子との差分により電子密度分布を計算する場合と、構造モデルの一部を取り除いた不完全な構造モデルとの差分電子密度分布を計算する2つがある。これらは、何を精密化するかにより使い分ける必要がある。例えば、対象とする物質が、秩序が乱れたDisorder構造をとる場合は、Disorderを示すと思われる部分を取り除いた電子密度分布を描くDMEMが有効性を発揮する。これまでの方法では、粉末試料のAb initio解析でDisorderを解明することは困難であった。本研究よりその様な場合でも、どのように対処すればよいかが分かった。これは、本研究を実施して得られた大きな成果で、この様な方法論的発展の上に、比較的大きな分子から構成される医薬品などにおいても、極めて精度の高い構造解析が可能となった。
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