研究概要 |
フォトニック結晶は、その内部に波長程度または波長以下のオーダの周期的な屈折率分布を設けた結晶であり,フォトニック結晶が持つ周期性により、光学定数(透過率、反射率、吸収係数などの)や偏波方向の制御の可能性がある。本研究では,ワイドバンドギャップで可視光及び紫外光に対して透明であるため、紫外線の発光や受光デバイス用材料として盛んに研究がなされている窒化物半導体で,フォトニック構造との組み合わせにより紫外光の透過率・反射率の制御および,偏向特性を明らかにする。 平成17年度は,周期構造による可視光及び紫外光の制御に関する知見を得るために,回折格子を用いて可視の発光ダイオードの光を面状に広げる方法について検討した。 電子線リソグラフィ技術を用いてポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上に描画した周期2.0〜0.8μmのライン&スペースパターンを適切な描画条件を設定することで設計どおりの回折格子構造を作製することができることを確認した。得られた回折格子にHe-Neレーザ(波長632nm)の光を入射したところ、回折パターンを確認できた。さらに発光波長が515nmである緑色LEDから回折格子を通して20mm離れた拡散板に光を照射したときの拡散板表面での発光強度分布を調べたところ、1次回折光に対応する光拡散が観察された。0次光による拡散と1次光による拡散を合わせると、回折格子が無い場合に比べ、光が広がることが明らかになった。 以上の結果から、発光ダイオードの表面に周期構造を作製することで、可視光の伝播を制御できることが明らかになった。この知見を基にすることで、窒化物半導体を用いた発光ダイオードや紫外線受光素子の素子表面にナノフォトニック結晶を作製すれば、紫外光の伝播を制御できる高性能な光デバイスが実現できるものと考えられる。
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