研究課題/領域番号 |
15360016
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寒川 誠二 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30323108)
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研究分担者 |
羽根 一博 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50164893)
小野 崇人 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90282095)
近藤 道雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, センター長 (30195911)
久保田 智広 東北大学, 流体科学研究所, 助手 (70322683)
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キーワード | 中性粒子ビーム / エッチング / 表面改質 / ナノカラム / カーボンナノチューブ / 有機分子デバイス / 高誘電率膜 / 起立ゲート型トランジスタ |
研究概要 |
本研究で開発した中性粒子ビーム源を用いて、本年度は、起立型トランジスタの作製、フェリチン鉄コアを用いた微細エッチング、シリコン酸化膜の低温成長、自己組織化単分子膜(SAM)カーボンナノチューブの改質を行った。 起立型トランジスタでは、32nm以降半導体デバイスで問題となる短チャネル効果を解決し微細化の限界を打ち破る新しいデバイスとして期待されている。しかし、チャネル領域を3次元的に加工する必要があり、従来のプラズマエッチングではチャネル部分にプラズマから放射される紫外線により欠陥が生成され、表面のラフネスも悪く、理想的な電子移動度が得られないという問題が発生している。そこで、この起立型トランジスタにおける3次元チャネル形成工程に中性粒子ビームを用いた加工を適用し、トランジスタを試作した。中性粒子ビームはプラズマからの紫外線放射を一切抑制できることから原子層レベルで無欠陥で平坦なチャネル側面を実現でき、従来のプラズマエッチングを用いた方法と比較して30%以上もの電子移動度向上が実現した。この電子移動度は理論値に近い値であり、中性粒子ビームは理想的なエッチングを実現できることを実証した。 フェリチンタンパク質に含まれる直径7nmの鉄コアをエッチングマスクとして用いた微細エッチングを行った。ビームエネルギーやガスケミストリー(塩素、フッ素)の制御により、直径7nmで高さ50nmで6〜7nm程度の極めて狭い間隔のエッチングや、高さ4nm程度のナノディスク構造の作製が実現し、量子デバイスへの応用に向けて進展があった。 将来の半導体デバイスで用いられることが期待されている高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜のための下地酸化膜には極薄酸化膜の低温成長が必要不可欠である。しかし、プラズマ酸化ではシリコンと絶縁膜の界面に損傷を与えるのでデバイス特性の劣化が問題となっている。そこで酸素中性粒子ビームを用いることにより、300℃という低温で、従来の熱酸化膜と遜色ない物性の酸化膜の形成が実現した。 次世代デバイスのひとつとして注目されている有機分子素子やカーボンナノチューブ素子の実現を日指して、中性粒子ビームを使った有機分子およびカーボンナノチューブの表面処理による物性制御を試みた。有機分子であるターフェニルメタンチオール(TP1)分子のSAM膜やカーボンナノチューブ表面に窒素およびアルゴン中性粒子ビームを照射することで、分子を破壊せずに表面を改質することができた。このことはトップダウン法とボトムアップ法の融合を大いに促進することであり、画期的な成果である。
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