研究概要 |
1.Si(111)7x7表面上に成長したAg薄膜中のn=1,n=2量子準位からの光第二高調波発生 Si(111)7x7表面上に供給するAg原子フラックスを、高速電子線回折(RHEED)振動により正確に測定し、表面のAg蒸着量をこれまで以上に正確に評価した上で、光子エネルギー1.4〜1.1eVの範囲の励起レーザー光に対する表面光第二高調波発生(SHG)強度のAg膜厚に対する変化を精密に測定した。この結果、これまで測定に掛からなかった三番目のSHG強度振動ピークまでが観測されるようになった。この実験結果を、走査トンネル顕微鏡(STM)によるAg薄膜高さ分布の評価結果と比較し、さらにAg薄膜中の量子閉じ込め準位に対する過去の光電子分光測定の結果を良く再現するような、two-band modelによる数値計算を行い比較検討した結果、Ag薄膜中には確かにn=1,n=2までの量子準位が出来ており、Ag膜厚増加に伴うSHG強度振動はこれらの各量子準位からAg/Si界面に局在するSiバンド起因の準位への2光子共鳴遷移によるものであることが、非常にクリアな形で明らかになった。 2.Si(111)1x1:H表面上への超平坦Ag薄膜成長と、それに伴うSHG強度振動 Si(111)7x7表面にWフィラメントでクラックした原子状水素を供給し、表面が1x1:H状態になる作成条件をSTMその場観察を併用して確立した。この1x1:H表面上に室温から、表面水素が脱離しない範囲(〜400℃)においてAgを蒸着し、その薄膜表面平坦性をRHEEDおよびSTMのその場観察により評価した。この結果、室温〜200℃程度では、モフォロジーは7x7表面上と大差ないが、300℃付近から成長モードが急激に変化し、7x7表目に比べて遥かに均一な高さのAg島が発生することが明らかになった。 このモフォロジー変化に対するAg島内量子閉じ込め準位の影響を調べるため、1x1:H上へのAg島成長時のSHG強度変化を測定した。この結果、室温〜200℃では7x7表面と大差ないSHG強度振動が観測されるのに対し、300℃ではSHG強度振動の様子は大きく変化した振る舞いを示すことが明らかになった。この変わったSHG強度変化に寄与するAg薄膜内量子準位を明らかにするため、SHG励起波長を変化させて、SHG強度振動におけるピーク位置のAG薄膜に対するシフトを測定し、現在解析を行っている。
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