研究概要 |
本課題の目的は,スピン偏極走査型トンネル顕微鏡(SP-STM)を作製し,室温強磁性半導体であるGaCrN等の電子状態をナノスケールで明らかにすること,GaN上に形成したGaCrN超薄膜の磁気的電気的性質をナノスケールで評価することである.sp-STMについては,本研究の交付決定が10月であったため,現在装置を作製し立ち上げ中である. SP-STMでGaCrN薄膜を評価するには,原子尺度で平坦な表面が必要となる.そこで,MOCVD成長したGaNテンプレート上に,原子尺度で平坦な表面を持つGaN薄膜の形成を試みた.V/III比のストイキオメトリが保たれた成長条件下の場合,その薄膜表面は成長初期から鮮明な(1x1)RHEEDパターンを示した.成長後,原子間力顕微鏡(AFM)で表面形状を調べたところ,原子層ステップと幅が100nm以下のテラスからなる原子尺度で平坦な表面であること,原子層ステップからなるマウンドも形成されていること,原子尺度で平坦な表面を得るにはV/III比のストイキオメトリを保つことが必須であること,が明らかとなった. 次に,サファイヤ上に形成したGaCrN薄膜結晶構造のCr濃度依存性を調べた.3-5%まではc軸長が減少し,それ以上ではGaNのそれに近い値を取ることが判明した.このことは,低濃度ではCrはGaサイトを置換して取り込まれているが,5%付近からCrNなどのクラスタ形成が起こっていることを示唆している.また,Cr濃度1%付近のGaCrN薄膜について,室温でも強磁性を示すことをSQUID測定から確かめている.室温強磁性を示すGaCrN薄膜に対して,磁気力顕微鏡による磁気像観察を行った.同時測定のAFM像で見られるドメイン構造を反映したコントラスト,その内部内でのコントラスト反転など,磁気力を反映した像が見られており,今後詳細に検討する.
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