研究概要 |
1.スピン偏極電子源の開発 従来の歪んだGaAs薄膜あるいは超格子を用いたスピン偏極電子源の表面は格子不整合による欠陥が発生している。この欠陥が強磁性体/GaAs界面の電気伝導に影響を与える可能性がある。このため、新たに2光子励起のスピン偏極電子源を検討した。この方法では2個の光子が同時に吸収される過程を利用するため、重い正孔あるいは軽い正孔のいずれか一方のみが励起され、バルク結晶を用いて高く偏極した光電子が得られる。p-GsAs基板を用いて、この方法により80%以上のスピン偏極電子を実現した。また、この方法では高いスピン偏極度が実現する励起レーザの波長域が200nmであった。これは従来の歪んだGaAs薄膜を用いた場合の12nmより遥かに広くなっている。 2.スピンフィルターの研究 GaAs基板上への磁性薄膜の作製条件の検討を行なった。まず初めに,レーザ光の照射方向に平行な方向に磁化をそろえるために,比較的低磁界で垂直磁化膜となるGdTbFe膜をGaAs基板上に作製する条件を検討した。次に,光電流の大きさをスピン偏極度の向きおよび強磁性層の磁化の向きを反転させて測定するために,軟磁性薄膜であるNiFeをGaAs基板上に作製することを検討した。作製後,NiFeは面内磁化膜なので膜面に斜方向からレーザ光を照射し,光電流の測定を試みた。また,スピン偏極電流測定の高感度化のために光チョッパとロックインアンプを購入し,直流分をカットして微少なスピン偏極に依存した電流のみを高感度で測定できるように,測定装置の改良を行なった。来年度はこの装置を用いて,スピン偏極度に依存した光電流の測定を重点的に行なう。
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