研究概要 |
1.垂直強磁性膜の作製 スパッタリング法により,GaAs基板上へ強磁性薄膜を作製する試料および条件の検討を行なった.垂直に入射するレーザ光の照射方向に平行に磁化をそろえるために,比較的低磁界で垂直磁化膜となるGdTbFe膜の作製条件を決定し,20nmの膜をp型および半絶縁性GaAs基板に作製した.このGdTbFe膜の磁気特性を測定し,垂直方向に磁化していることを確認した. 2.スピンフィルターの研究 GaAs基板内に円偏光レーザでスピン偏極電子を励起し光電流を測定した.電極は強磁性膜およびGaAs基板裏にそれぞれCu膜およびAu膜を蒸着した.厚さはいずれも20nmである.電子の励起は一光子励起法および2光子励起法で行った.円偏光励起レーザ光の向きを変えて測定を行い,半絶縁性GaAs基板の場合,スピン方向による伝導電流の差が検出された.この差は電子を強磁性膜側に取り出した場合にのみ観測され,基板側に取り出した場合は観測されず,強磁性体内でのスピン偏極電子流の抵抗がスピン方向によって変化することが確認された.スピンに依存する電流の変化の割合は一光子励起法および2光子励起法でそれぞれ0.45%および0.76%であった.なお,p-型GaAsの場合は光電流の影響が大きく,スピン方向に依存した電流の差は確認できなかった. 3.高性能スピン偏極電子線源の開発 GaAs/GaAsP歪超格子を用いたスピン偏極電子線源を開発した.この線源の超格子内での電子のスピン偏極度をフォトルミネセンスの発光の偏りから測定し,〜90%の偏極度の電子が結晶内に励起されていることを確認した.来年度はこの線源の上に強磁性膜を作製し,より精密な実験を行う.
|