研究概要 |
研究計画に沿って本年度は以下の研究を実施した 1.光散乱場の複素解析信号の擬似位相情報の利用技術の提案 振幅情報にくらべて位相情報は検出器の非線形性や量子化ノイズに強いという利点がある.しかし,光散乱場の位相情報を得るには干渉計を必要とし,そのため光学系が複雑になり,振動や空気揺らぎの存在する悪環境の現場での利用上の制約が生じる.そこで,本年度は干渉計なしでスペックルの強度情報を何らかの形で位相情報に対応づけるための手段を検討した.その結果,ヒルベルト変換に基づくスペックル強度場の解析信号表現により得られる擬似位相情報を利用する新しいスペックル計測法の原理の着想を得て,その原理の有用性を実験により実証した.この原理は,レーザースペックルパターンのみならず,コンピュータなどで人工的に生成したランダムドットパターンや自然界のテクスチャーなどのランダム構造を持つ空間パターンへ位相の概念を導入して計測に利用することを可能にするものである. 2.擬似位相の位相特異点密度に着目した微小変位計測法の提案と有効性の実験による検証 スペックル場の複素解析信号から得られる擬似位相場の位相特異点が物体の微小変位に対応して移動することを実験的に確かめ,物体に変位を与える前後の2つのスペックルパターンの擬似位相分布の位相特異点の位置情報を利用する新しい変位計測法を提案した.変位前後の擬似位相場に既知の横ずらしを与えて差をとることにより得られる位相差分布の中に存在する位相特異点の密度に着目し,それが最小になる横ずらし量から物体の微小変位を精密計測する原理の有効性を実験により実証した.
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