研究概要 |
拡散表面をもつ物体からの光散乱場の位相情報を用いた新しい光波センシング技術を開拓することを目的として,光散乱場の位相分布の中に生成される光渦場(Optical Vortex)の渦中心に存在する位相特異点(Phase Singularity)の統計的性質を実験により明らかにした.また,従来のホログラフィー干渉計測では位相特異点をノイズとみなし除去しようとしていたが,本研究では位相特異点の統計的性質を利用して微小変異の精密計測する新しい発想に基づく原理を提案し,計測装置を試作しその有効性を実験的に示した. その具体的内容は以下の通りである. 1.光散乱場の位相特異点の空間構造と統計的性質の解明 フーリエ縞解析法による精密干渉計測と波動場の内挿により光渦場の位相特異点近傍の位相の空間構造を高分解能計測する技術を開発し,Berryが理論的に予測した光散乱場の位相特異点の楕円的空間異方構造とその統計的性質を初めて実験的に確認した.また,Dennisが理論的に予言した位相特異点近傍の位相場の角運動量のケプラー則を初めて実験により検証した. 2.光散乱場の複素解析信号のもつ擬似位相場と位相特異点の統計的性質を利用した微小変位計測 干渉計なしでスペックルの強度情報を位相情報に対応づけるための手段としてヒルベルト変換に基づくスペックル強度場の複素解析信号表現を採用し,複素解析信号の位相特異点の空間密度や光散乱場の複素解析信号の相関関数を用いて微小変位を精密計測する原理を提案し,装置を試作し,原理の有効性を実験的に実証した。
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