高帯域半導体レーザカオス秘匿通信ジェネレータに関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15360029
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 静岡大学
• 研究代表者: 大坪 順次 静岡大学, 工学部, 教授 (00176942)
• 研究分担者: 中山 敬三 静岡大学, 工学部, 助手 (80324333)
• キーワード: 半導体レーザ / カオス / 秘匿通信 / 非線形ダイナミックス

研究概要

半導体レーザに外部から高レベルのレーザ光を注入すると、注入されたレーザの変調帯域が著しく高帯域化することが最近明らかになっている。しかし、その詳しい特性や理論的背景については不明な点が多い。カオス通信においては、カオス振動をメッセージ埋め込みのためのキャリアとするため、高帯域変調特性を持つカオスジェネレータの開発が重要である。本研究においては、半導体レーザの変調高帯域化についての詳細な特性を調べ、その理論的な背景を確立することを一つの目的とする。さらに、本研究のもう一つの目的として、カオス秘匿通信に適した高帯域半導体レーザカオスジェネレータの開発を行う。
外部注入光による半導体レーザの変調特性については、レーザレート方程式モデルによる予備的な数値解析を行い、変調帯域拡大できることを理論的に明らかにした。また、帯域拡大の程度については、光注入による単純な緩和振動周波数の拡大というモデルだけは十分な説明ができなかったが、光注入レーザとスレーブレーザ間の離調による干渉効果のモデルによって周波数拡大の可能性を示すことができた。しかし、周波数拡大された領域がフラットな特性を持つことなど詳細については問題点も残り、今後の課題となった。
これらの課題と並行して、外部レーザからカオス半導体レーザへの注入同期により帯域拡大されたレーザのカオスについて予備実験を行い、高帯域半導体レーザカオスジェネレータの特性を調べた。具体的には、周波数拡大する半導体レーザにチューナブルレーザによる適当な周波数ロッキングを行い、戻り光によるカオスを発生させ、カオス変動周波数の拡大がどの程度、実験的にできるのかについて検討を行った。まだ光学系の設定が十分ではなく、帯域拡大が十分ではないが、2倍近い周波数拡大が可能となった。今後、レーザパラメータによる周波数拡大の依存性について調べる。

研究成果

• [文献書誌] Y.Takiguchi, K.Ohyagi, J.Ohtsubo: "Expanded-Bandwidth Chaos Synchronization in Semiconductor Lasers with Optical Feedback by Strong Optical Injection"Opt.Lett.. Vol.28 No.5. 319-321 (2003)
• [文献書誌] N.Fujiwara, Y.Takiguchi, J.Ohtsubo: "Experimental Synchronization in Mutually Coupled VCSELs"Opt.Lett.. Vol.28 No.18. 1677-1679 (2003)
• [文献書誌] K.Kusumoto, J.Ohtsubo: "Anticipating Chaos Synchronization at High Optical Feedback Rate in Compound Cavity Semiconductor Lasers"IEEE J.Quantum Electron. Vol.39 No.12. 1531-1536 (2003)
• [文献書誌] N.Fujiwara, J.Ohtsubo: "Synchronization in Chaotic Vertical-Cavity Surface-Emitting Semiconductor Lasers"SPIE Proc.. Vol.5349(印刷中). (2004)
• [文献書誌] H.Koshio, J.Ohtsubo: "Instability and Dynamic Characteristics of Self-Pulsating Semiconductor Lasers with Optical Feedback"SPIE Proc.. Vol.5349(印刷中). (2004)