本研究は、フェムト秒レーザーを用いたホログラフィにより光の伝播の様子を連続画像として観察する技術を開発し、それを超高速現象の観察・計測に応用することを目的としている。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.パルス面形状に関する詳しい解析 ホログラムからの再生像として観察される光パルスの面の形状は、実際に生じているそれとは異なり、参照光の角度、観察位置などに依存する。観察結果は理論から導かれる結果と一致することを確かめた。この技術を超高速現象の観察・計測に応用するためには、理論解析に基づいた変換を行って真のパルス面形状を知る必要があることを明らかにした。 2.再生像の空間的・時間的分解能の解析 ホログラムに記録される干渉縞は、パルス幅が狭いほどその領域は狭くなる。そのため再生像の解像力は回折によって低下する。水平および垂直方向の解像力を測定し、それらが理論から導かれる結果と同じ傾向を示すことを確かめた。 3.3次元空間を伝播する光パルスの観察 光パルスを拡散板などに投射してそこからの散乱光を物体光とするこれまでの実験と異なり、3次元空間を伝播する光パルスそのものを観察するため、ゼラチンゼリーを散乱媒体としてその空間を伝播するパルス光のホログラム記録に成功した。再生像は、連続光で記録した場合とは異なり左右が反転するという現象が観察された。これは、物体から出てホログラムに到達するまでのパルス光の時間差によるもので、その現象についての理論的な解析を進めている。
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