研究課題
スラブ型光導波路上に格子構造を設けると、導波路内に回折される光の共鳴現象のために特定の波長の光が強く反射される。これを用いて狭帯域の波長選択フィルタが実現できる。本研究では、導波路層に電気光学効果を持つ媒質を採用することで、印加電圧で共鳴波長を制御する「波長可変の狭帯域フィルタ」の実現を目的としている。本研究では、光導波層にチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT:(Pb1-xLax)(ZryTil-y)1-x/4O3)を用い、基板にはサファイア(Al2O3)、格子構造には透明電極を用いる構成を考案した。今年度は、昨年度に開発した「導波層の複屈折を厳密に取り扱う電磁解析計算プログラム」を用いて、精度の高いフィルタ設計を行った。時間領域差分法(FDTD法)において、誘電率テンソルを正確に考慮しすることで、格子に対する光共鳴の様子を厳密に計算できるようになり、これを用いて印可電圧に対するフィルタの波長シフト量を見積もった。また、これまで用いてきた近似的な計算手法との比較を行い、近似的な手法が第1次的な計算手段として有効であることが分かった。一方、初年度では透明電極にITO膜を用いたフィルタを設計・試作していたが、通信波長帯(波長1.55□m)に対応するために透明電極格子をInTiO薄膜に変更し、素子の設計と試作を行った。設計では5Vの印加電圧に対して約2nmの共鳴波長シフトが得られることが分かった。実際にInTiO薄膜格子電極をもつ共鳴格子を作製し、共鳴反射が得られていることを確認した。その他、短い波長の光を入射し、その回折光強度からPLZT薄膜の電気光学効果を見積もる方法を考案した。
すべて 2005
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Journal of Optical Society of America, A (印刷中)